皮膚の構造と働き
アトピーの舞台となる皮膚の働きについて知っておきましょう。
皮膚の構造
皮膚は人体最大の臓器です。その表面積は日本人の成人で平均1.6㎡に及び、体重の約16%を占めます。臓器の中で最も重い肝臓の約3倍に相当します。
皮膚には、私たちの体を外界や外敵から守るという重要な役割があります。
皮膚は4つの層に分かれていて、下から「基底層」「有棘層」「顆粒層」までは細胞核があり、生きた細胞として機能していますが、最外層の「角質層」に至ると細胞核はなくなり、細胞としては死んでいる状態になります。
その角質層は、角質細胞と、その間を埋める天然のクリーム(皮脂と汗が混ざり合ったもの)で構成されており、この二つが一体となって皮膚のバリア機能を果たしています。
基底層から常に新しい細胞が生まれてくるため、角質層の細胞は日々剥がれ落ちて「代謝」を繰り返します。この剥がれ落ちた角質が「垢」となります。
一般的なアトピー皮膚理論
西洋医療ではアトピー性皮膚炎は遺伝性が高く、元々肌の乾燥が強くバリア機能が低いため、そこから様々な異物が侵入し、アトピー症状が引き起こされると定義しています。
一般的な皮膚科では、ステロイドなどの薬物療法に加え、バリア機能を補うためのスキンケアが指導されることがほとんどです。これは、日本皮膚科学会が標準治療として定めているためです。
具体的には、「しっかり洗う」「しっかり保湿する」といった指導が行われ、皮膚科によっては特定の商品を勧められることもあります。
皮膚の驚くべき機能
資生堂で長年、研究員を務められた方の著書に皮膚の本があります。
その本には、皮膚が持つ驚くべき能力が実験結果とともに記されていて化粧品会社の方がここまで書いてしまって良いのか、と思うほど、皮膚が持つ自活力について深く知ることができます。
皮膚は常に置かれた環境をモニタリングし、その環境に適応するために必要な対応を取り続けています。
暑ければ汗を出して体温を下げ、寒ければ鳥肌のように毛穴を締めて体温が逃げないようにします。
また、私たちの目では認識できない波長の光線すらも感知するなど、皮膚は膨大な情報量をキャッチし、常に適切な判断を下しているのです。
これは「賢い」というレベルをはるかに超えています。
この素晴らしい臓器に対して、私たちは「あれが足りない」「これが足りない」と勝手に判断し、様々な手を加えてしまうのです。
この本の中で私が最も感動したのは、皮膚の潤いについての実験でした。
実験はシンプルで、湿度の高い部屋と、湿度の低い部屋、それぞれの部屋で2週間ずつ過ごした人の皮膚の潤いを調べるというものです。
結果は、湿度の高い部屋で過ごした人の潤いは著しく低下し、乾燥状態で過ごした人の潤いは倍増していました。
理由は簡単です。皮膚は常に環境をモニタリングし、それに自律的に適応するからです。
外部に湿気があるのに皮膚まで湿気を作り出したらバランスが崩れてしまいます。
だから、湿度の高い環境では皮膚の潤いの生成を抑えて過ごし、反対に乾燥しているなら、自分で潤いを作り出して対応すれば良い、というわけです。
皮膚の能力を侮ってはいけない!ということなのです。
私はかつて自分の肌を「ポンコツだ」と思っていました。すぐ荒れるアトピー肌で困ったものだと。
しかし、そのアトピー症状すらも、体のコントロールの元に成り立っているのです。だからこそ、まずは自分の肌の力を信じ、その働きを邪魔しないことが大切です。
私の経験則
アトピーが起こっている時は乾燥状態にあり、バリア機能が弱いのは間違いありません。
しかし、「卵が先か鶏が先か」と同じで、本当に乾燥が起点となってアトピーが起こっているのかというと、私の経験上では疑問が残ります。
ご自身やお子さんも、アトピーになる前は健康で潤った肌ではありませんでしたか?
私の長男もアトピーが出るまではモチモチでとても健康な皮膚をしていましたが、ある日急に乾燥と痒みが始まりました。
また、アトピーの方を見た時に、全身の皮膚が患部と同じように乾燥しているわけではないことがほとんどです。
症状が出るところは乾燥が強いですが、出ないところは普通の肌をしています。
もし遺伝でバリア機能が弱い細胞を持って生まれたのであれば、全身が同じ状態でないと説明がつきませんし、症状の出方が時期によって変化することも説明できません。
アトピーは「体のお掃除」でしたね。
お掃除として皮膚からの排出力を高めるためには、乾燥状態を作り出す方が効率的です。
乾燥して細胞の間に隙間ができれば、炎症の熱感を逃すのも早いですし、皮膚呼吸もしやすくなります。
さらに、ボロボロと皮膚が剥がれやすくなるため、細胞の入れ替わりの回転が早くなります。排出を最短最速で実現するために、乾燥状態が有効なのです。
これまで多くの方を見ても断言できるのは、炎症の必要がなくなれば乾燥は自然に消えるということです。
乾燥が原因でアトピーになるのではなく、アトピーという「お掃除」の過程として乾燥が必要なのです。
ですから、体がお掃除を終えてアトピーを出す必要がなくなれば、皮膚を乾燥させる必要もなくなります。体にとって、皮膚をあえて乾燥させバリア機能を低下させることはリスクでもあります。
皮膚を乾燥させる分、抗菌ペプチドなどを数倍作り出して対処していますが、異物が入る可能性は高まりますし、大量の細胞を作り出して捨てていく作業は、莫大なエネルギーを必要とします。
必要がなければ体だって無駄なリスクを負いたくないし、無駄なエネルギーも使いたくありません。
全ては命をつなぐための判断によって行われています。日々のケアにつながる部分は実践の項目で詳しくお伝えします。
体の仕組みを信頼して、根本改善を進めていきましょう。