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声掛けの根本

親の何気ない一言が、子どもの世界を決める


子どもの世界は、親の言葉によって形づくられていきます。

私には、子育ての中で今も深く感謝している歯医者さんがいます。

まだ3歳だった長男が、初めて歯科治療を受けた日のことです。治療が終わるなり、私は反射的に「痛かった?」と声をかけました。

すると、その瞬間に先生が「お母さん、それはダメだ!」と、はっきりした口調で言われたのです。

私は何がいけなかったのかわからず、思わずきょとんとしてしまいました。

すると先生はこう続けました。

「お母さんが“痛かった?”と聞くことで、子どもの中に“治療=痛いもの”という認識が生まれます。治療が終わった後は、ただ“ちゃんとできたね”と伝えればいいんですよ。」

その言葉に、私はハッとさせられ、心から感動しました。そして、感謝の気持ちを伝えました。

それ以来、私の子育てにおける声掛けは大きく変わりました。

これは、私たち親子がアトピー改善に取り組む、ずっと前の出来事です。けれど今振り返ると、この出来事は、アトピー改善にも深くつながっていたのだと感じています。




その一言が、子どもの心と肌を救う


私自身がそれを理解するまでには、正直かなりの時間がかかりました。アトピーで掻いてしまう姿、痛々しい皮膚の状態を見て、

「掻いちゃダメ」

「ひどくなっちゃったね」

そんな言葉が口をついて出てしまう気持ちは、痛いほどわかります。かつての私も、まったく同じでした。でもそれは、アトピーの仕組みを知らなかったからでした。

掻くことも、皮膚からの排出も、すべては必要があって起きている。そのことを、ここまで繰り返しお伝えしてきました。

この仕組みが、母の根っこにまでしっかりと染み込んでいくと、自然と、子どもにかける言葉も変わっていきます。

前章でお伝えした、長男の「僕の体、今、頑張っているんだね」という言葉も、私自身の捉え方の変化と確実につながっています。

「掻いちゃダメ」「ひどくなっちゃったね」

そう言われ続けると、子どもの中には

「自分は掻いてしまう悪い子だ」「自分の身体はダメなんだ」

という認識が、静かに育っていきます。

一方で、「好きなだけ掻いていいんだよ」「身体が一生懸命頑張っているね」と伝えられたとしたらどうでしょう。

同じ状況であっても、子どもの中に生まれる世界は、ほとんど真逆と言っていいほど違ってきます。

どちらが幸せか、という話もありますが、そもそもどちらが“本質”でしょうか。

痒くて掻くこと。排出のために炎症が起こること。そして、必要がなくなれば皮膚が整っていくこと。それらはすべて、とても自然な体の営みです。

まずはその事実を、親である私たち自身の中に、しっかりと染み込ませることが大切です。

言葉だけを無理に前向きにしても、自分の中で腑に落ちていなければ、どこかで必ずブレが出ます。そのブレは、子どもにとっては混乱になります。

大切なのは、自分の内側から自然に出てくる言葉が肯定的であること。そして、それが安定していること。

母から繰り返し聞く、ブレのない言葉は、少しずつ、でも確実に、子どもの世界を変えていきます。



知識は、日常の声掛けから育つ


知識的なことも、特別に教え込む必要はありません。

実践の中で、買い物や調理をしながら、「親がどこを見て、何を考えて選んでいるのか」それを言葉にして伝えていくだけで、子どもの感覚は自然と育っていきます。

例えば、

「植物油脂がたくさん入っているから」
「知らないカタカナの材料が多いから」
「甘味料が入っているから」
「だから、これは選ばないよ」

「お腹の負担を減らしたいから鶏肉の皮は取るよ」
「豚バラは茹でこぼして脂を減らすよ」

こんな具合です。

私が特に意識していたのは、「今は」という言葉を添えることでした。

それ自体が悪いわけではなく、「今は、お腹の仕事が少し追いつかないと思うからね」そんなニュアンスを大切にしていました。

それは、元気になったあとに、食べ物に対して過度な抵抗感を持たせたくなかったからです。食べることも人生の喜びのひとつだから。

親のほんの少しの言葉選びで、子どもの中に育つ善悪の基準や、アトピーに対する価値観は大きく変わっていきます。

子どもの豊かな未来のために、とても大切にしていきたい部分だと、私は感じています。








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